1. はじめに
「ボス」と「リーダー」という言葉はよく聞きますが、実際にその違いは何でしょうか?最近部下を持った方や組織運営に悩む方にとって、この違いを理解することは重要です。
この記事では、トヨタの会議でも引用されたイギリスの高級百貨店セルフリッジズの創業者、ハリー・ゴードン・セルフリッジの言葉を通じて、リーダーとボスの違いを考察します。
組織がうまくいくためのリーダーシップとはどのようなものか、見つめ直してみましょう。
2. ボスとリーダーの違い:セルフリッジの言葉に学ぶ
セルフリッジは、リーダーシップの本質を簡潔に、そして力強く示しています。彼の言葉をもとに、「ボス」と「リーダー」の違いを表にしてまとめました。
項目 | ボス | リーダー |
---|---|---|
追い立て方 | 部下を追い立てる | 人を導く |
業務指示のやり方 | 権威に頼る | 志、善意に頼る |
動機付けの方法 | 恐怖を吹き込む | 熱意を吹き込む |
発言の主体 | 私という | われわれという |
会議などの集合について | 時間通りに来いと言う | 時間前にやってくる |
失敗の責任 | 失敗の責任を追わせる | 黙って失敗を処理する |
やり方の共有 | やり方を胸に秘める | やり方を具体的に教える |
仕事の捉え方 | 仕事を苦役に変える | 仕事をゲームに変える |
指示方法 | やれと言う | やろうと言う |
この表は、ボスが権威や恐怖を与え、指示だけをしていることに対し、リーダーは、自分事としてとらえ、相手を尊重したうえで一緒に仕事を行おうという気持ちがあります。
いずれも、ボスの考え方には、「昔は自分も苦労したから」「自分への責任が及ぶのをイヤ」など、自分のことだけを考え、部下の成長まで考慮していないことが見え隠れしています。
この小さな違いが、組織全体のモチベーションと成果に大きな影響を与えます。
3. リーダーシップに関する研究
リーダーシップの違いは感覚的なものだけではありません。実際に、リーダーシップスタイルが組織のパフォーマンスにどのように影響するかについては、多くの研究が行われています。
たとえば、ハーバード・ビジネス・レビューによると、リーダーが部下に対して信頼と自主性を与えることが、チームのパフォーマンス向上につながるというデータがあります。
また、ダニエル・ゴールマンの「エモーショナル・リーダーシップ」理論では、リーダーが感情的に関わることが、組織内の人間関係を良好にし、長期的な成功を引き寄せる要因であるとされています。
この理論では、ボスのように威圧的で支配的なリーダーシップは、短期的には成果を出すかもしれませんが、長期的には組織の活力を損なうリスクがあると指摘しています。
4. ボスとリーダーのどちらを選ぶか
リーダーシップには、ボスとリーダーそれぞれのスタイルが存在しますが、どちらにも長所と短所があります。ボス的なスタイルは即効性があり、短期間で結果を出すことができますが、長期的に見ると部下のモチベーションや成長を阻害する可能性があります。
一方で、リーダー的なスタイルは、時間をかけて信頼関係を築き、部下の自主性とクリエイティビティを引き出します。
たとえば、ボスのように「失敗したら責任を取れ」と言うのではなく、リーダーのように「失敗は成長の一部だ」と考えることで、部下はチャレンジしやすくなります。これにより、組織全体が成長のサイクルに入る可能性が高くなります。
5. リーダーとしての第一歩を踏み出すために
セルフリッジの言葉に表された「ボス」と「リーダー」の違いを理解することで、組織運営の視点が広がります。
恐怖ではなく熱意を吹き込み、部下を追い立てるのではなく導くリーダーシップを目指すことが、成功する組織を築くための鍵です。今一度、自分がどちらのタイプに近いのか、考えてみてはいかがでしょうか?