はじめに
「なぜあの人と話がかみ合わないのだろう?」と感じたことはありませんか? その原因は、私たち一人ひとりが異なる「フィルター」を通して物事を見ているからかもしれません。
人は自分の経験や価値観を通して、物事を理解し、相手の話を解釈します。本記事では、この「フィルター」の役割を理解し、コミュニケーションをより円滑にするためのヒントを紹介します。
自分のフィルターとは?
私たちが物事を認識する際、何かをそのまま受け取っているわけではありません。色眼鏡という言葉があるように、人それぞれが持つ「フィルター」を通して情報を選別し、解釈しています。フィルターとは、私たちの経験、感情、価値観、信念といった要素から形成され、無意識に私たちの物事の捉え方に影響を与えます。
『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』という書籍には下記のような記載があります。
言葉を発している人と、受け取っている人とでは、「知識の枠組み」も違えば「思考の枠組み」も異なるため、仮にすべての情報を漏れなく伝えたとしても、頭の中を共有することはできない
「おいしいごはん」と聞いても、人によっては焼肉だったり、海鮮料理だったり、受け取った人の好みと今までの経験によって創造するものが異なることになりかねないのです。
「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策 / 今井むつみ (著)
共有ビジョンの重要性
フィルターの存在を認識することは、相手との効果的なコミュニケーションを図る上で重要です。特に、仕事や日常生活において、同じビジョンやイメージを共有することが求められます。そのためには、自分のフィルターにとらわれず、相手の視点を理解し、共通の土台を作ることが大切です。
ここで有効なのが、図やビジュアルを使ったイメージ共有です。抽象的な言葉だけでなく、図やグラフを使うことで、双方が同じイメージを持つことが可能です。
たとえば、「クールなファッション」というテーマでデザインコンペがあったとして、言葉で伝えるよりもラフ画を描いて伝えたほうが「百聞は一見に如かず」の言葉のように理解しやすいです。
心理学的根拠
心理学では、「選択的知覚」と呼ばれる現象が知られています。人は自分の興味や関心に基づき、見たいものや聞きたい情報にフォーカスする傾向があります。また、認知心理学では「確証バイアス」という概念もあります。これは、自分の信念を裏付ける情報だけを重視し、それに反する情報を無視するというものです。
これらの研究は、私たちが常に中立な情報処理をしているわけではないことを示しています。コミュニケーションの場面でも、相手が異なるフィルターを持っていることを意識することが大切です。
メリットとデメリット
フィルターを持つこと自体にはメリットもデメリットもあります。フィルターは、過去の経験や価値観に基づいて、物事を効率的に理解するために役立ちます。例えば、長年の経験から得た直感や感覚は、複雑な問題に迅速に対処するためのツールとなります。
一方で、フィルターが偏っていると、柔軟な思考が妨げられ、新しい視点を受け入れにくくなることもあります。自分のフィルターが原因で、他者の意見を理解しづらくなったり、話がかみ合わないと感じる場合があります。
具体的な対策
フィルターの影響を受けつつも、より円滑なコミュニケーションを取るためには、以下のような対策が有効です。
- 自分のフィルターを意識する:自分がどういう観点から物事を見ているのかを振り返り、相手の視点も考慮する。メタ思考をうまく活用し、自分を客観視してみましょう。
- オープンマインドを持つ:相手の意見や視点を尊重し、すぐに否定せずに傾聴する。
- 視覚的な共有を活用する:図やグラフを用いて、話の内容や進行状況を共有することで、同じビジョンを持つ。
まとめ
人は皆、自分の経験や価値観に基づいたフィルターを通して物事を理解しています。それゆえ、相手とのコミュニケーションにギャップが生じることがあります。しかし、自分のフィルターを意識し、共通のビジョンを共有する努力をすれば、そのギャップを埋め、より円滑なコミュニケーションが可能となるでしょう。